あなたの集中力と健康を支える「縁の下の力持ち」、ビタミンKとは?
ビタミンCやビタミンDに比べて、少し地味な印象のある「ビタミンK」。名前は聞いたことがあっても、具体的にどんな働きをしているか知らない、という方も多いのではないでしょうか。
しかし、ビタミンKは、私たちが毎日を元気に過ごすために欠かせない、まさに「縁の下の力持ち」のような栄養素です。長時間デスクワークや勉強で同じ姿勢を続ける体を支える丈夫な骨、集中力や思考を巡らせるために必要な健全な血流、そして近年の研究では記憶や学習といった脳の働きにも関わっている可能性が示唆されています。
この記事では、そんなビタミンKが持つ多面的な効果から、不足や過剰摂取のリスク、毎日の食事で手軽に摂る方法、そして最新の研究動向まで、あなたのパフォーマンスを最大限に引き出すための知識を、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。
ビタミンKとは?知られざる3つの働き
ビタミンKは、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」の一種です。大きく分けて、植物由来のビタミンK1(フィロキノン)と、動物性食品や発酵食品、そして私たちの腸内細菌によって作られるビタミンK2(メナキノン)の2種類が存在します。
特にビタミンK2は、メナキノン-4(MK-4)やメナキノン-7(MK-7)など複数の種類があり、納豆にはMK-7、肉類や卵黄にはMK-4が多く含まれるなど、食品によって含まれる種類が異なります。
一般的に知られる「血を止める」働き以外にも、私たちのパフォーマンスに直結する重要な役割を担っています。
- 血液を正常に固める(止血作用): ビタミンKの最も有名な働きです。けがをした際、出血を止めるために必要な血液凝固因子を肝臓で活性化させます。この働きがなければ、私たちは少しの傷でも血が止まらなくなってしまいます。
- 丈夫な骨をつくる(骨形成促進): カルシウムを骨に沈着させるために不可欠なたんぱく質「オステオカルシン」を活性化させるスイッチの役割を果たします。カルシウムをたくさん摂っても、ビタミンKが不足していると骨にうまく取り込まれず、骨密度の低下や骨粗しょう症のリスクにつながります。
- 血管の健康としなやかさを保つ(動脈硬化抑制): 血管の壁にカルシウムが沈着して硬くなる「石灰化」は、動脈硬化の原因の一つです。ビタミンKは、この石灰化を防ぐたんぱく質(マトリックスGlaタンパク質)を活性化させ、血管のしなやかさを維持する働きがあることがわかっています。
- 脳の健康と認知機能をサポート(研究進行中): 近年の研究により、ビタミンKは脳機能の維持にも重要な役割を果たす可能性が示されています。特に東北大学などの研究グループは、脳に多く存在するビタミンK2(メナキノン-4)が、学習や記憶を司る「海馬」において、脳内の過剰な炎症反応を抑える働きを持つことを報告しています。これは、ビタミンKが脳を慢性的な炎症から守り、健全な認知機能を維持する上で重要であることを示唆しています。
ビタミンK不足による影響:仕事や勉強のパフォーマンス低下に直結
健康な人が通常の食生活を送っていれば、ビタミンKが極端に不足することは稀です。しかし、何らかの理由で不足すると、目に見える症状から、自覚しにくい体の内側の問題まで、様々な影響が現れる可能性があります。
- 出血傾向: 最も代表的な症状です。血液が固まりにくくなるため、鼻血が出やすい、青あざができやすい、歯茎から出血しやすい、小さな切り傷でも血が止まりにくい、といったことが起こります。
- 骨粗しょう症のリスク増: ビタミンK不足が長期にわたると、骨の形成が不十分になり、骨密度が低下します。これにより、骨がもろくなり、ささいなことで骨折しやすくなる「骨粗しょう症」のリスクが高まります。
- 新生児・乳児のビタミンK欠乏性出血症: 生後間もない赤ちゃんは、腸内環境が整っておらず、母乳からのビタミンK移行量も少ないため、ビタミンKが不足しがちです。これにより頭蓋内出血など命に関わる重篤な出血症を起こすことがあるため、日本では予防的にビタミンK2シロップが投与されます。
ビタミンKが不足しやすい人の特徴
極端な偏食やダイエットをしている人、脂質の吸収に問題がある病気(慢性膵炎や胆道閉鎖症など)を持つ人、また、腸内細菌のバランスを乱す可能性のある抗生物質を長期間服用している人などは、ビタミンKが不足するリスクが高まるため注意が必要です。
ビタミンKの1日の推奨摂取量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、健康な人が不足状態になることを防ぐための「目安量」が以下のように設定されています。
(出典: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より作成)
2019年の国民健康・栄養調査では、男女ともにほとんどの年代でこの目安量をクリアしており、平均摂取量は20代でも200μgを超えています。和食に多い海苔や緑黄色野菜、納豆などを食べる習慣があれば、過度に心配する必要はないと言えるでしょう。
ビタミンKの食品からの摂取法:吸収率を高めるコツも
ビタミンKは、意識すれば毎日の食事から簡単に摂ることができます。ビタミンK1は緑黄色野菜に、ビタミンK2は発酵食品や動物性食品に多く含まれます。
ビタミンK1が豊富な食品 (100gあたり)
- パセリ: 850μg
- しそ: 690μg
- モロヘイヤ: 640μg
- ほうれん草(ゆで): 320μg
- ブロッコリー: 210μg
ビタミンK2が豊富な食品 (100gあたり)
- 納豆(糸引き): 600μg
- 鶏もも肉: 19μg
- バター: 17μg
- 卵黄: 14μg
- チーズ(ゴーダ): 6μg
(出典: 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」などを参考に一般的な数値を記載)
【吸収率アップのポイント】
ビタミンKは脂溶性なので、油と一緒に摂ることで吸収率が格段に上がります。ほうれん草はバターでソテーする、サラダにはオリーブオイルベースのドレッシングをかけるなど、調理法を少し工夫するのがおすすめです。
ビタミンKのサプリメントからの摂取法
栄養は食事から摂るのが大原則ですが、多忙な毎日の中で常にバランスの取れた食事を続けるのは難しいものです。そんな時に、サプリメントは心強い味方になります。
1. 摂取のタイミングと方法:吸収率を高める
ビタミンKは脂溶性ビタミンのため、その吸収には油(脂質)が必要です。最も効果的なのは、食事中か食後すぐに摂ること。胃腸が活発に動き、食事に含まれる油分と一緒に吸収されるため、効率がぐんと上がります。空腹時に水だけで飲むのに比べ、吸収率に大きな差が出ます。
2. 選び方のポイント:目的に合わせた種類と配合
ビタミンKのサプリメントは多様です。自分に合ったものを選ぶための視点を紹介します。
- 種類で選ぶ(K1 vs K2):
- ビタミンK1: 主に緑黄色野菜由来。血液凝固作用への関与が深いです。
- ビタミンK2: 納豆菌などが作り出す成分。骨や血管で働く作用が注目されています。特にビタミンK2の中でも「メナキノン-7(MK-7)」は、体内に長く留まる性質があり、効率が良いとされています。
- 目的で選ぶ(配合成分に注目):
- 品質で選ぶ:
- 毎日体に入れるものだからこそ、品質は重要です。信頼できるメーカーの製品か、製造管理の基準(GMP認定工場など)が明確な製品を選ぶとより安心です。
3. 【最重要】摂取における最大の注意点
サプリメントは手軽ですが、注意点もあります。
過剰摂取に注意: 通常の食事ではまず問題ありませんが、サプリメントで安易に高用量を摂取するのは推奨されません。製品に記載されている摂取目安量を守りましょう。
ワルファリン服用者は絶対NG: 血液を固まりにくくする薬「ワルファリン(ワーファリン)」を服用している方は、ビタミンKが薬の効果を著しく弱めてしまうため、自己判断でのサプリメント摂取は絶対に避けてください。これは治療に関わる非常に重要な点ですので、必ず主治医や薬剤師に相談してください。
【私の体験談】おすすめのビタミンKサプリメントを紹介
「サプリメントの選び方は分かったけど、結局どれがいいの?」という声が聞こえてきそうですね。そこで今回は、私が実際に試行錯誤してたどり着き、現在も愛用しているサプリメントを1つ紹介します。
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Nutricost ビタミンK2 (MK-7) 100mcg

私がこのサプリメントを選んでいる理由は、大きく3つあります。
- ビタミンDとの相性を考えた用量
私は健康維持のために、毎日2,000IUのビタミンDサプリメントを摂取しています。ビタミンDはカルシウムの吸収を促しますが、そのカルシウムが骨に正しく沈着するためにはビタミンK2の助けが必要です。このサプリは1粒100mcgと、多すぎず少なすぎず、私のビタミンD摂取量に合わせるのに「ちょうどいい」含有量なんです。 - 圧倒的なコストパフォーマンス
毎日続けるものだから、価格は非常に重要です。この製品は、iHerbのセールや定期購入などを利用すると1回あたり約8円、定価でも約11円と驚異的なコストパフォーマンスを誇ります。品質と価格のバランスが非常に優れているのが、Nutricost製品の魅力ですね。 - 信頼性と続けやすさ
体内に長く留まりやすいとされるビタミンK2(MK-7)を採用している点や、飲み込みやすい小粒のソフトカプセルである点も、長く続けられている理由です。
もちろん、これはあくまで私個人の体験談です。サプリメントは体質や目的によって合う・合わないがありますので、ぜひご自身のライフスタイルに合ったものを見つける参考にしてみてください。
ビタミンKとビタミンD:骨の健康を守る最強タッグ
ビタミンKの効果、特に骨の健康を考える上で、絶対に外せないパートナーがビタミンDです。
この2つのビタミンは、チームで働くことで骨の健康を強力にサポートします。
どんなにカルシウムを摂っても、ビタミンDが不足すると体内にうまく吸収されません。そして、ビタミンKが不足すると、吸収されたカルシウムが骨まで届かず、血管などに沈着してしまう可能性も指摘されています。
つまり、丈夫な骨を維持するためには、この2つのビタミンをセットで摂ることが非常に重要です。
ビタミンDの効果や正しい摂取法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてお読みください。
ビタミンKの過剰摂取のリスク
通常の食事からビタミンKを摂取する場合、体に害を及ぼすような過剰摂取になる心配はまずありません。そのため、厚生労働省も「耐容上限量(これ以上摂ると健康リスクが高まる量)」を設定していません。
ただし、これは天然に存在するビタミンK1とK2に限った話です。合成ビタミンKであるビタミンK3(メナジオン)は、高用量で毒性を示す可能性があるため、現在ではヒト用のサプリメントには使用されていません。サプリメントを利用する場合でも、製品に記載された目安量を守ることが大切です。
ビタミンKに関する最新研究事例の紹介
ビタミンKの研究は日進月歩で、私たちの健康に関する新たな可能性が次々と明らかになっています。
事例1:未知の抗酸化作用「フェロトーシス」抑制効果の発見(Nature, 2022)
東北大学などの研究チームは、ビタミンKが「フェロトーシス」という特殊な細胞死を強力に防ぐ、これまで知られていなかった抗酸化作用を持つことを発見しました。このフェロトーシスは、アルツハイマー病などの神経変性疾患や急性腎不全に関与すると考えられており、ビタミンKがこれらの病気の新たな予防・治療法につながる可能性を示唆しています。
(出典: Mishima, E., et al. Nature. 2022)
事例2:ビタミンK不足が認知機能低下と脳内炎症を誘発する可能性(The Journal of Nutrition, 2025)
タフツ大学の研究チームは、中年期のマウスを対象とした研究で、ビタミンKの摂取不足が脳機能に悪影響を及ぼすことを明らかにしました。この研究では、ビタミンKを制限した食事を与えられたマウスは、標準的な食事のマウスと比較して、新しい物体を覚える記憶力や、水中の隠れた足場を見つけ出す空間学習能力が著しく低下しました。さらに、これらのマウスの脳を解析したところ、記憶を司る海馬において、脳で主要なビタミンK形態であるメナキノン-4(MK-4)が著しく減少し、新たな神経細胞の生成が抑制される一方で、神経炎症が増加していることが確認されました。この発見は、ビタミンKが脳の健康を維持し、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐ上で重要な役割を担っている可能性を示唆しています。
(出典: Zheng, T., et al. The Journal of Nutrition. 2025;155(4):1119-1126. DOI: 10.1016/j.tjnut.2025.01.023)
これらの研究は、ビタミンKが血液や骨だけでなく、細胞レベルでの防御機能や脳機能の維持にも貢献している可能性を示しており、その重要性がますます高まっています。
ビタミンKに関するよくある誤解と真実
Q. 「血液サラサラの薬」を飲んでいたら、納豆は絶対ダメ?
A. いいえ、薬の種類によります。 影響があるのは主に「ワルファリン(ワーファリン)」という薬です。この薬はビタミンKの作用を妨げることで効果を発揮するため、ビタミンKを豊富に含む納豆やクロレラ、青汁などの摂取が制限されます。しかし、現在処方されている他の多くの血液を固まりにくくする薬(DOACなど)は、ビタミンKの影響を受けません。自己判断で食事内容を変えるのは危険ですので、必ず主治医や薬剤師に確認しましょう。
Q. ビタミンK2は納豆でしか摂れない?
A. いいえ、他の食品からも摂れます。 納豆がビタミンK2(特にMK-7)を非常に多く含むのは事実ですが、チーズや卵黄、肉類などにもビタミンK2(主にMK-4)は含まれています。また、腸内細菌もビタミンK2を産生します。納豆が苦手な方も、他の食品と緑黄色野菜をバランス良く食べることで、必要なビタミンKを確保することは可能です。
ビタミンKに関するよくある質問(FAQ)
Q1: ビタミンK1とK2、どちらを摂ればいいですか?
A1: ビタミンK1は主に肝臓で血液凝固に、ビタミンK2は骨や血管など全身で働くという役割分担があると考えられています。どちらか一方に偏るのではなく、K1が豊富な緑黄色野菜と、K2が豊富な発酵食品や動物性食品を、バランス良く食事に取り入れることが理想的です。
Q2: ビタミンKと相性の良い栄養素はありますか?
A2: 骨の健康を目的とするなら、骨の主成分であるカルシウムと、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの3つをセットで摂ることが「骨のゴールデントリオ」と呼ばれ、非常に効果的です。また、脂溶性ビタミンなので、吸収を助ける適度な脂質も大切なパートナーです。
Q3: 日焼け止めを塗っているとビタミンKは不足しますか?
A3: いいえ、関係ありません。日光(紫外線)を浴びることで皮膚で合成されるのはビタミンDです。ビタミンKは食事から摂取する必要があるため、日焼け止めの使用が直接ビタミンK不足につながることはありません。
【ビタミンK】のまとめ
最後に、あなたのパフォーマンスを支えるビタミンKの重要ポイントを振り返りましょう。
- ビタミンKは、血液凝固、丈夫な骨作り、血管の健康維持、そして脳機能のサポートまで担う多才な栄養素です。
- 成人の1日の摂取目安量は150μg。納豆、ほうれん草、ブロッコリーなど身近な食品から簡単に摂取できます。
- 通常の食事で過剰摂取の心配はほとんどありませんが、抗凝固薬のワルファリンを服用中の方は摂取に注意が必要です。
- 脂溶性のため、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。炒め物やオイルドレッシングを活用しましょう。
- 最新研究では細胞を保護する抗酸化作用や認知機能への関与も示唆されており、今後ますます重要性が高まる栄養素です。
参考文献
- 厚生労働省. (2019). 日本人の食事摂取基準(2020年版).
- 白川 仁, 駒井 三千夫. (2014). ビタミンKの生体内変換と生成したメナキノン-4の機能. オレオサイエンス, 14(12), 547-553.
- Mishima, E., Ito, J., Wu, Z., et al. (2022). A non-canonical vitamin K cycle is a potent ferroptosis suppressor. Nature, 608, 778–783. DOI: 10.1038/s41586-022-05022-3
- Zheng, T., Marschall, S., Weinberg, J., et al. (2025). Low Vitamin K Intake Impairs Cognition, Neurogenesis, and Elevates Neuroinflammation in C57BL/6 Mice. The Journal of Nutrition, 155(4), 1119-1126. DOI: 10.1016/j.tjnut.2025.01.023
- Schurgers, L. J., & Shearer, M. J. (2023). Diverse biological functions of vitamin K: from coagulation to brain function. Seminars in Thrombosis and Hemostasis. PMID: 37337123
- Booth, S. L., et al. (2022). Vitamin K and brain health. Frontiers in Nutrition. DOI: 10.3389/fnut.2022.947237



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